平成30年税制改正にて画期的な新・事業承継税制ができました

 新事業承継税制のスケジュールは重要 《解説》当制度における5年間・10年間とは
 まずは10年間の意味
 続いて5年間の意味
 スケジュール上もうひとつ重要な「3年間」
 贈与承継前に先代経営者が亡くなったら
 経営革新等支援機関として事業承継税制をバックアップします
 事業承継関連リンク集

 

新事業承継税制のスケジュールは重要 《解説》当制度における5年間・10年間とは

 100%の納税猶予や雇用8割維持要件の実質撤廃など根本的な見直しがなされた平成30年からの新・事業承継税制。使い勝手が良くなり、全ての中小企業が注目すべき制度となりました。

 5年間・10年間などの言葉が飛び交っていますが、いつまでに何をしなければならないのか、その後いつまで何かしなければならないのか、スケジュールの面から全体を整理・解説したいと思います。

 キーとなるのは都道府県に対する円滑化法認定申請(贈与の場合その翌年1月15日まで、相続の場合発生後8か月後まで)です。その認定書の写しとともに税務申告(3月15日まで・10か月後まで)することにより納税猶予を受けることになるからです。この認定申請承継計画確認申請とは別で、承継計画確認申請がまず提出されていることが前提となります。
 承認計画確認申請(R5/3R6/3まで) → 代表者交代・株の贈与(R9/12まで) → 円滑化法認定申請 → 税務申告 の順です。

【典型スケジュール】

都道府県に承継計画確認申請を提出します。(令和5年 令和6年 令和8年3月31日まで)

先代経営者は退任し、後継者が代表者に就任します。
先代経営者の持ち株を後継者に贈与します。「最初の贈与」(令和9年12月31日まで)

都道府県に円滑化法認定申請を提出します(最初の贈与の翌年1月15日まで)。

円滑化法認定申請の認定書写しを添付して贈与税の確定申告をします(納税額ゼロ円)(贈与の翌年3月15日まで)。

贈与税申告から5年後の3月15日までが特例経営贈与承継期間で、年に一回、雇用維持などややきつい縛りをクリアしていることを証する年次報告書(都道府県)と継続届出書(税務署)を5回提出します。

5年経過後もやや緩い縛りがあります。3年に一度、クリアしていることを証する継続届出書を提出します(税務署)。

先代経営者の相続発生・相続税納税猶予への切替手続

3年に一度の継続届出書はそのまま

後継者の相続等により税額猶予は免除へ

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まずは10年間の意味

 この制度は令和9年(2027年)12月末までの時限措置です。平成30年(2018年)1月からの贈与相続に適用される制度ですので10年間です。
 令和9年末までに行われる承継バトンタッチ(代表者の座を譲り、さらに筆頭株式を贈与相続すること)がこの制度の対象となります。

 相続についてはもちろんタイミングは指定できませんが、令和9年末までにバトンタッチ贈与が行われこの特例制度の適用を受けていれば、令和10年以降の相続についても切替という形で特例制度が適用継続されます。

 後継者があまりに若く、令和9年末までに社長交代かつ筆頭株主化が想定できないのであれば、この制度を使う意味は余りないかもしれません。ただし令和9年まで(の特に後半5年)に先代経営者の不慮の事故が無いとも限りませんし、承継計画確認申請だけは出しておくべきと思います。

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続いて5年間の意味

 3種類あります。

1.承継計画確認申請の提出期限は令和5年 令和6年 令和8年3月31日までです

【令和6年度税制改正にて承継計画確認申請の提出期限が2年延長され、令和8年3月までとなります。】
【令和4年度税制改正にて承継計画確認申請の提出期限が1年延長され、令和6年3月までとなりました。】

 認定申請する前提として、承継計画確認申請があらかじめ(あるいは同時に)都道府県に提出されている必要がありますが、その提出期限が令和5年 令和6年 令和8年3月31日までです。当制度開始後5 6 8年ですね。承継計画確認申請を提出して、その後バトンタッチや認定申請しなくてもペナルティはありません。この申請書はそれほどボリュームもありませんし、とりあえず提出しておくべきだと思われます。

 その後令和9年12月までに代表権を譲り、贈与を行うべき、というのは上述のとおりです。

(令和5 6 8年3月31日までに贈与・相続を行う場合は承継計画確認申請は贈与・相続後の提出も可能です。円滑化法認定申請は贈与・相続の数か月~1年後になりますし、承継計画確認申請は円滑化法認定申請と同時でも良いためです。バトンタッチ贈与→翌年1月15日までに承継計画確認申請と円滑化法認定申請を同時に、というイメージです。)

2.特例経営承継期間(ややきつい縛り期間)としての5年間

 バトンタッチ贈与(最初の贈与)した翌年3月15日が贈与税申告期限ですが、その3月15日から5年後の3月15日までの5年間を「特例経営(贈与)承継期間」と呼び、その間、ややきつい縛りがあります。後継者代表要件、継続保有要件、雇用8割維持要件など。

 これは「最初の贈与」の贈与税申告期限から5年が対象となり、5年間の間に追随的贈与が生じたり、先代経営者の死亡により相続税猶予への切り替えが生じたとしても、「最初の贈与」贈与税申告期限の5年後に終了します。

 当制度においては令和15年3月15日までの5年間が最も遅いパターン、ということになりますね。

 特例経営承継期間中は6月15日までに都道府県に年次報告書を、8月15日までに税務署に継続届出書を提出します(5回)。

 5年経過後はやや緩い縛り期間に入ります(税額猶予が免除となる時まで:典型的には数十年後の後継者の死亡まで)。その間は3年に1度、6月15日までに税務署に継続届出書を提出します。

やや緩い縛りの例
・資産保有型会社、資産運用型会社に該当しないこと
・減資、減準備金をしないこと(欠損填補を除く)
・継続届出書未提出や虚偽記載

ややきつい縛りの例 上記「やや緩い縛りの例」に加え
・後継者代表退任 (5年経過後はフリー、相続税猶予切替を予定している場合は考慮要)
・贈与株の一部譲渡 (5年経過前は全額取消、経過後は一部)
・雇用8割維持(ただし理由書で回避可能) (5年経過後はフリー)

 これらの縛りに抵触すると、猶予されていた税額に利子税を付して国に納めることになります。

3.追随的贈与有効期間としての5年間

 バトンタッチ贈与(最初の贈与)から5年後の年末までの間は配偶者等からの追随的贈与ができます。5年間というか、最長5.99年間ですね。その年末の3か月15日後に特例経営承継期間(ややきつい縛り期間)のエンドが来ます。
当制度においては令和14年12月31日までの5年間が最も遅いパターン、ということになります。

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スケジュール上もうひとつ重要な「3年間」

 後継者のバトンタッチ贈与時の要件のひとつとして「役員就任から3年以上を経過していること」があります。つまり現在役員でない場合、3年後以降のバトンタッチ贈与のために役員に就任しておくべき、ということになります。

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贈与承継前に先代経営者が亡くなったら

 上記のとおり、典型的には ①承継計画認定申請 ②先代経営者が代表権を譲り、株を贈与する ③円滑化法認定申請 ④贈与税申告 という順番ですが、それより先に先代経営者が亡くなることも起こり得ます。贈与を経ず相続からこの猶予制度を適用するパターンです。

 なお相続から入る場合、上述の役員就任後3年以上要件はありませんが、代わりに相続開始直前において役員であったことが要件となります。相続はいつ発生するかも知れず、十分留意すべきポイントです。【令和3年度税制改正において相続開始直前に役員でなくても、
①被相続人が、70歳未満で死亡した場合
あるいは
②後継者が、承継計画確認申請において、特例後継者として記載されている者である場合
は適用できることになりました。】

令和56年3月31日までの相続発生

 相続発生後でも承継計画確認申請を提出できるので適用可能です。

令和56年4月1日から令和9年12月31日までの相続発生

 令和56年3月31日までに承継計画確認申請を提出済みであれば適用可能です。この不慮の事態に備え、令和5年までに承継計画を出しておくべき、ということになります。

令和10年1月1日以降の相続発生

 令和56年3月31日までに承継計画確認申請を提出済み、かつ、令和9年12月31日までに事業承継、つまりバトンタッチ贈与および令和10年1月15日までの円滑化法認定申請が行われていないと適用できません。
 つまり令和9年末までに当事業承継税制(贈与税猶予)を適用していなければ適用できません。

相続から入る場合の特例経営承継期間(ややきつい縛り期間)

 贈与の場合はその翌年3月15日からの5年間ですが、相続から入る場合は相続税申告期限の日(相続発生10か月後)がスタート、それから5年間となります。

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 弊事務所は認定経営革新等支援機関として承認計画確認申請等、制度全体をバックアップいたします。

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